衣食住から衣食住情の時代が到来
老若男女、誰もが持っている携帯電話とスマートフォンによって、生活の基本要素は情報が加わって、衣食住情になった感がある。
すでに、国内市場は、携帯電話世帯普及率は約95%を越え、スマートフォン(スマホ)も約63%を超え、普及が一巡したといえる。1)
2014年スマホおよび携帯電話の出荷台数は2,748万台(前年度比7.2%減)となり、2,972万台を出荷した2012年度をピークに2年連続で減少した。世界市場は、インド・中国をはじめとする新興国に牽引されて、2013年におけるスマホも含めた携帯電話の全出荷台数は前年比4.8%増の18億2180万台、2011年に4億9440万台だったスマホの年間出荷台数はわずか2年で倍増し、スマホ普及が急速に進んでいる。2)
世界市場の状況
日本の市場は飽和したが、世界に目を向ければこれからまだ市場拡大が続いていく。
世界人口は2012年から2030年まで70.5億人から83.2億人と12.7億人増加すると見込まれ、その95%がアフリカ・南西アジアの新興国に集中する。その市場拡大に牽引されて、スマホ・携帯電話出荷台数は今後10年間年率4~5%の増加が続く。3)
携帯通信のパラダイム・チェンジ
スマホ・携帯電話のモバイル通信は、急速に普及するM2M(機器間通信:Machine to Machine)を含めたIoT(もののインターネット:Internet of Things)の主要な通信手段である。国内では、2014年度は2013年度に比べ回線数で70%成長と高い伸びを示し、国内・世界市場で、今後も年率30%前後の成長持続が予測される。
今後の市場動向
市場占有率からみると、上位メーカーは以下のとおりだが、パソコンがそうであったことからも、これから大きな変動も十分に予想される。
2014年度スマホ・メーカー世界シェアは第1位サムスン(韓国)24.5% 前年度比0.4%増、第2位アップル(アメリカ)14.8% 前年度比25.5%増だが、新興国の需要拡大に呼応して第3位ファーウェイ(前年度比50%増 中国)第4位レノボ(前年度比54%増 中国)その他メーカー(前年度比44%増)が猛追している。
MVMOの台頭とIoTの未来
先進国では、携帯電話会社との直接契約よりも割安なMVNO(仮想移動体サービス事業者:Mobile Virtual Network Operator)モバイル通信契約が普及しつつある。国内でも、通話+データ通信利用の従来型形態から、データ通信のみ、通話のみの利用というIoT領域を含めた多彩な回線利用が促進されている、4)
2014年3月現在、国内のMVNO契約数は952万(前期比+6.5%、前年同期比+28.9%)で、従来の携帯電話会社の契約数に占める比率は6.1%である。5)モバイル通信回線はソーシャルサービス通信インフラの一翼を担う。世界的高齢化に伴い医療やヘルスケアで、安否・所在確認、遠隔医療やバイタルデータ収集などで活用されている。また農業ほか各産業分野では環境モニタ、作業モニタと遠隔管制など、家庭やオフィスでは家電・事務機・ロボットなどでデータ通信利用が進む。また、IoT機器での通話利用は、緊急通報、作業指示などで活用されている。
通信+機器のパズル化
昨年、スマホ出荷台数は前年度比7.2%減(2,748万台)に対して、フィーチャーフォン(ガラケー)出荷台数は6.0%増(1,040万台)で7年ぶりの逆転が起こった。このことからもスマホ一辺倒から用途に応じた使い分け利用の傾向が見て取れる。情報はタブレット、電話はガラケーという“使い分け”が進む。この流れを受けて、ガラケーとスマホのハイブリッド機種「ガラホ」が今年の夏から販売され、ガラケー料金でスマホ機能と電話の使い勝手が両立できるようになる。使い分けの未来像として、通話、測位、周辺機器通信、カメラなどの機能を“駒“にして、利用者が必要に応じてパズルのように組み合せられる機器開発がProject Araにより進められている。
見込まれる市場規模
市場規模は、2015年時点で世界は3兆2700億米ドル、国内で10兆9700億円程度、2020年世界は5兆2000億米ドル、国内で15兆5000億円程度、2025年は世界で6兆3000億米ドル、日本で31兆円程度となる。世界市場は、新興国中間層の増加に呼応するスマホ・携帯電話契約の増加(年率5%増)が牽引し、国内市場は、頭打ちのスマホ・携帯電話契約にかわり年率30%で伸びるIoT通信回線増加が牽引する。
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多彩な利用目的での通信利用商品
2015年度以降の出荷台数規模を左右するポイントとしては①SIMロック解除 ②SIMフリー端末(格安スマホ)/MVNO SIM(格安SIM)の台頭があげられる。SIMロック解除は総務省のガイドライン改訂に基づき、2015年5月より新しい制度がスタートした。現状では、購入後半年間はSIMロック解除が適用できない制限があり、2020年ごろにはさらに制限が緩和されると見ている。
Windows10では、スマホ、タブレット、PCという区分をなくし、画面サイズ以外の障壁を取り去ることをすでに発表している。
低価格化は、MVNOの普及に呼応して進み、昨年発売されたPolaroid PIGのような1万円を切るスマホが今後も発売される。
時計型端末は、2013年9月に発売され不評を買ったGalaxy Gear(Samsun製)の後、本年発売のApple Watchはよい評価を受けている。現状ではスマホ周辺機器だが、来年発売予定のApple Watch第二世代はカメラ装備、Web機能強化など、スマホからの独立性が高まるという。時計型端末がスマホを介さずにインターネット接続するようになるのは2020年以降と予想されるが、そのために電源問題解決しなくてはならない。まずは低消費電力化を進められ、次いでソーラーや熱電素子(温度差による発電素子)発電研究が進み、充電不要の実用化は2025年以降になる。
自由に曲がるディスプレイを持つスマホは実用化されず、2013年に曲面ディスプレイの低反射効果で照度を抑えたG Flex(LG製)が発売、昨年本体の一辺を曲面化表示するGalaxy Note Edge (Samsun製)が発売された。
スマホと周辺機器との無線接続はBlueTooth Low Energyの登場により低消費電力化と接続の容易さによって、測位利用などビーコン機能を生かした活用が見込まれている。安価で超低消費電力ビーコンとスマホ機能の連動でナビゲーションなどへの活用が期待されている。
背景を支える技術革新
前出のProject Araは、プロセッサーやストレージ、センサー、無線通信、2次電池(バッテリー)など、スマホの構成要素を「モジュール」とする。2014年に発表されたプロジェクトには東芝ほかメーカーが参加し、将来は1000以上のモジュールメーカの参加を受け、50米ドルのスマホの実現と同時に、自動車、家電、ロボットなどにも共通接続できる単機能”駒“が登場する。製品化は2018年以降と予想される。
ソフトウェア開発の一元化はすでに進んでいて、iOS、Android、Windows搭載ハードウェアに対応できる共通の開発クロスプラットフォームが提供されている。2018年以降、各OSでさらにスムーズにデータ共有・アプリケーション共有するクロスプラットフォーム化が進む。
モバイル機器全般の最大の課題は電源である。この課題解決のために使用電力低減、充電時間短縮、小型化大容量化、ワイアレス充電、環境エネルギーによる発電などが研究されている。使用電力低減はさまざまな研究開発がなされ順次改良が進む。充電時間の短縮では、StoreDot社が既存スマホを30秒でフルチャージする技術を2016年内に製品化開始するとしており、2017年以降利用可能と思われる。小型化と大容量化ではリチウムイオン電池の改良が進むと同時に、新たな技術開発として、スタンフォード大学ではフルチャージまで1分、大容量、充電回数7,500回、発火しないアルミニウムイオン電池を開発した。ワイアレス充電では、uBeam社が超音波で、WiTricity社は電磁界共鳴による方法を開発中である。
ディスプレイ技術では、自由に曲げられるフレキシブル化はすでに開発済み。昨年、従来の半分の消費電力で色の再現性の高いMEMS-IGZO(シャープ製)が発表され、2017年から一般搭載される。今後もさらに低消費電力のディスプレイが継続開発される。とりわけ次世代技術として、量子ドットというナノメータサイズ半導体結晶の一種を使う省電力、高輝度、色の表現力に優れたディスプレイが期待されている。
ARへの拡張と新たな世界への助走
ポケモンGOの話題が、世界中を駆け巡った。通信機器と連動して現実と仮想が重ね合す新たな活用が、一気に世界にそして一般に広がった。
その広がりがわずか数週間であることを考えると、携行する情報機器の未来は、もはや予測不能の未来を象徴した出来事であった。
通信はもとより機器すらも意識せずにいつでもどこでも利用するサービスは、正に仮想と現実の区別すら曖昧にする新しい文化をいくつも生み出すことであろう。と同時に、国家、経済、そして生命の存亡を左右する影響力を潜在的にはすでに備えていると言っても過言ではない。
ARへの拡張と新たな世界への助走
ポケモンGOの話題が、世界中を駆け巡った。通信機器と連動して現実と仮想が重ね合す新たな活用が、一気に世界にそして一般に広がった。
その広がりがわずか数週間であることを考えると、携行する情報機器の未来は、もはや予測不能の未来を象徴した出来事であった。
通信はもとより機器すらも意識せずにいつでもどこでも利用するサービスは、正に仮想と現実の区別すら曖昧にする新しい文化をいくつも生み出すことであろう。と同時に、国家、経済、そして生命の存亡を左右する力を潜在的には備えていると言っても過言ではない。
このポテンシャルをプラスとなるモノを供給することこそ、Project Mayの責務と考えている。
(文責 白石昌二朗)
参考文献
1)総務省 平成26年度情報通信白書
2)International Data Corporation IDCが現地時間2014年1月27日/2015年1月29日に公表した世界の携帯電話市場に関する調査結果(速報値)
3)経済産業省 通商白書2013 4)総務省 2014年ブロードバンド普及促進のための環境整備に係るガイドラインの策定 5)総務省 電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(平成26年度第4四半期(3月末)
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